
膝の水を抜く処置と原因に合わせた治療の考え方
膝に水がたまったとき、強い腫れや張りで曲げ伸ばししにくいときや原因を調べたいときは水を抜く処置(関節穿刺)を考え、水が少なければ薬やリハビリで様子を見ることもあります。水を抜くこと自体がくせになるわけではなく、関節の中の炎症が続いているために、またたまります。この記事では、処置を決める目安、超音波検査を含む原因の調べ方、処置のあとの過ごし方や急いで受診したい目安をまとめました。
この記事の要点まとめ
- 強い腫れや張りで動かしにくいときや、原因を確かめたいときは関節穿刺を考え、症状が軽ければ様子を見ることもあります。
- 水がまたたまるもとには滑膜の炎症などがあり、診察や超音波検査、関節液の検査で原因を調べます。
- 原因に合わせて薬や注射、リハビリ、ふだんの動き方の見直しを組み合わせ、処置のあとの過ごし方や受診の目安を医師と確かめます。
膝の水はどんな時に抜く?抜かずに様子を見る場合との違いは?
関節穿刺(注射の針で膝の中の水を抜くこと)は、腫れや張りで膝を曲げ伸ばししにくいときや、原因を調べたいときに考え、水が少なくふだんの困りごとが小さいときは抜かずに様子を見ることもあります。診察や超音波検査で水の量と場所を確かめたうえで、方針を決めていきます。
抜く目的は「腫れ・痛みを和らげる」と「原因を調べる」の2つ
関節液(関節の動きを滑らかにする液体)が増えて関節包(関節を包む袋)が内側から張ると、痛みや曲げにくさが出ます。針で水を抜くと関節内の圧力が下がり、曲げ伸ばしのつらさを和らげる処置になります。
もう一つの目的は、抜いた液の色や濁りに加え、顕微鏡や培養の検査で結晶や細菌の有無を調べ、炎症の原因の手がかりを得る検査の役割です。一時的に動かしやすくなっただけで終わりにせず、なぜ溜まったのかを確かめる視点が欠かせません。
抜くことが検討される状態・抜かずに経過を見る状態の目安
膝の張りや痛みの程度、日常生活での困りごとによって対応の目安が分かれます。
| 判断の方向性 | 主な状態・目安 |
|---|---|
| 抜く処置を検討する状態 | 膝が張ってしゃがみ込みや車の乗り降りが難しい、強い痛みや熱感がある、初めての腫れや急な腫れで原因を調べる必要がある |
| 抜かずに経過を見る状態 | 関節液が少量で痛みが軽く日常動作への支障が小さい、原因がすでに分かっており薬やリハビリで落ち着きつつある |
表は一般的な目安であり、最終的には身体所見と超音波検査などの結果をもとに医師と相談して決めます。
毎週のように抜く前に、溜まる頻度から治療計画を見直す
すぐにまた水がたまるときは、毎週のように抜く回数をふやすより、炎症のもとや膝へのかかり方を見直すサインと考えます。いつごろからたまったか、立ち仕事や外出の量、腫れのぐあいをメモして医師に伝えましょう。薬やリハビリをふくめた治療の進め方を決めるのに役立ちます。
「抜くと癖になる」は本当?膝に再び水が溜まる理由は?

水を抜く処置そのものが癖を作るのではなく、関節内の滑膜(関節包の内側を覆う膜)の炎症や関節の変化が続いているために再び溜まります。変形性膝関節症などで、膝に水がくり返したまって悩む方は少なくありません。
癖になるのではなく、滑膜の炎症が続いているから溜まる
膝の水のもとは、滑膜でつくられる関節液です。軟骨のすり減りなどの刺激で滑膜に炎症(滑膜炎)がおこると、関節液がたくさんつくられます。いっぽうで吸いこまれる量が追いつかず、水がたまった状態(関節水腫)になります。
注射で水を抜いても、火元である滑膜の炎症が残っていれば再び関節液が作られます。そのため「抜いたからまた溜まった」と感じやすいのですが、原因は処置ではなく残っている炎症にあります。
ポイント
膝の水は抜いたから癖になるのではなく、関節内の炎症が続いているために再び溜まります。
変形性膝関節症・半月板損傷・偽痛風など溜まり続ける原因
膝の水が増えるもとには、中高年の女性に多い変形性膝関節症があります。ほかにも、半月板や靭帯のけが、関節リウマチ、尿酸などの結晶がたまっておこる痛風・偽痛風、細菌が入っておこる感染などが考えられます。原因によって使う薬や処置の組み立てが変わるため、もとにある病気を確かめることが大切です。
腫れが引いて通院をやめた後に再発しやすい背景
一度水を抜いて腫れが引くと落ち着いたように感じますが、太ももの筋力低下や体重による負荷、長時間の立ち仕事など膝へ負担がかかる要因が残っていると、症状がぶり返すことがあります。変形性膝関節症における痛みや機能低下には複数の要因が関わることが報告されており1、症状が和らいだ後も負担を減らす取り組みを続けることが大切です。
膝の水が溜まる原因はどう調べ、薬やリハビリとどう組み合わせる?
ていねいなお話の聞きとりや体の診察、画像の検査で原因をしぼりこみ、水を抜く処置に加えて飲み薬や注射、リハビリ、暮らしの中での負担の調整を組み合わせて進めます。なかなかよくならないと感じるときほど、診察室での処置とリハビリ室での動きづくりをつなげて考えることが役立ちます。
レントゲンで分かる骨の変化と、超音波(エコー)で見える関節液・滑膜
整形外科にとってレントゲンは骨の変形や関節のすき間を確かめる基本的な検査ですが、骨を見ただけでは原因が捉えきれないことも少なくありません。そこで超音波診断装置(エコー)を用いると、関節液の量や位置、滑膜の腫れ、筋肉や靭帯の状態をその場で確認できます。超音波で位置を見ながら針を刺すと、関節液をねらった場所から抜きやすいとされています2。
抜いた関節液の色・濁りから分かることと追加検査が必要な場合
抜いた関節液の色や濁りは、炎症や結晶、細菌による感染などを調べる手がかりになります。感染や結晶による炎症を調べる関節液の検査のほか、半月板や靭帯をくわしく見る必要があるときは、連携する医療機関でのMRI検査などを考えます。
痛み止め・ヒアルロン酸注射と、太ももの筋肉を動かすリハビリの役割
症状が軽いときは、痛み止めの飲み薬や貼り薬を使ったり、膝の関節にヒアルロン酸を注射したりします3。一方、リハビリでは太もも前側の大腿四頭筋などを自ら動かし、関節の動きや姿勢を見直すことで膝への負担を減らしていきます13。
固定や安静に偏りすぎず、状態に合わせて徐々に身体を動かす運動療法が機能面の維持に関わります3。
なお、ふつうの保存療法で変化が少ない変形性膝関節症などでは、ほかの選択肢が考えられることもあります。たとえば、超音波で確かめながら筋膜などに生理食塩水などを入れるハイドロリリースや、膝の痛みを伝える神経に高周波で処置をするクーリーフです。これらは自由診療(公的医療保険が使えない)として行われる場合もあります。
注射に伴う一般的なリスクとして、内出血や針を刺したところの痛み、まれに感染などがあり、期待した変化が出ないこともあります。自由診療でのハイドロリリースの一般的な目安は、1回あたり3,000〜10,000円程度、回数は1〜3回程度、期間は数週間〜2ヵ月ほどで経過をみる例が多いとされています。クーリーフの費用は医療機関によって幅があります。
これらは一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用や具体的な治療期間・回数は診察のうえでご案内します。
立ち仕事や庭仕事、しゃがむ動作など膝の負担を調整する工夫
長時間の立ち仕事では合間に片足ずつ重心を移す、庭仕事や床の物を取る時は深くしゃがまず低い椅子を使う、階段の上り下りは手すりを使うなど、日常の動作を少し変えるだけでも関節への刺激を抑えられます。膝の痛みから外出を控えて活動範囲が狭まる流れを防ぎ、笑顔で歩ける日々を保つための工夫です。
膝の水を抜く処置のリスクと当日の過ごし方は?急いで受診したい症状は?
関節穿刺は外来で行う短時間の処置ですが、まれに感染や出血などのリスクを伴うため、処置当日は膝への負担を控えて清潔に保ちます。また、発熱や強い熱感、急激な腫れがある場合は、時間を置かずに整形外科を受診してください。
穿刺に伴う感染・出血などのリスクと、持病がある方が伝えたいこと
針を刺す処置では、まれに皮下出血や処置後の一時的な痛みが出ることがあり、とくに針を刺したところから細菌が入らないよう気をつける必要があります。処置の前には皮膚の消毒や超音波での確認2を行います。血液をサラサラにする薬を飲んでいる方や、糖尿病で食事・運動・薬で血糖を整えている方4は、出血や感染に気を配る必要があるため、診察のときに必ずお伝えください。
処置当日・翌日の立ち仕事や車の運転、入浴の目安
処置の当日は、針を刺したところから細菌が入るのを防ぐため、湯船につかる入浴は控えます。シャワーができるかどうかは、医師の指示に従ってください。当日や翌日の長時間の立ち仕事、膝を深く曲げる動作、車の運転は、関節液の量や注入した薬剤、痛みの程度によって控えたい範囲が異なるため、勤務や家族の送迎などの予定を伝えて復帰の目安を医師と確認してください。
発熱・強い熱感・急な腫れ、膝の力が一瞬抜ける時は早めに受診
次のような症状がある場合は、様子を見ずに早めの受診を検討してください。
- 体に熱がある、または膝がひどく赤くなって熱っぽい(細菌が入っておこる関節の炎症や偽痛風などのおそれ)
- 短時間で急に膝が腫れ上がり、体重をかけられない
- 歩いている時に膝の力が一瞬抜ける、ガクッとする感覚がある(半月板や靭帯の損傷、筋力低下などの確認が必要)
膝の水を相談する前に整理しておきたい情報
受診するときは、前に水を抜いた時期と回数、その後のようす、今回腫れはじめたきっかけ、熱っぽさがあるかをメモしておくと、話がスムーズに進みます。飲んでいる薬や持病、立ち仕事や車の運転といった暮らしの予定もあわせて伝え、ご自身の生活に合った検査や治療の進め方を相談してみてください。
よくある質問
Q1. 膝の水を自分で抜く方法はありますか?
A. ご自身で針などを刺して抜くことは絶対に行わないでください。関節の中に細菌が入って化膿性関節炎を起こすなど、関節の機能に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。サポーターや冷却で様子を見る場合も、腫れが続く際は医療機関でご相談ください。
Q2. 膝の水を抜く治療にかかる料金はどのくらいですか?
A. 保険が使える水を抜く処置(関節穿刺)そのものは、3割負担で数百円〜1,000円ほどがよくある目安です。これに、はじめての受診や通院ごとの料金、レントゲンや超音波の検査、関節液の検査、いっしょに行う注射の薬代などが加わります。お支払いの合計は、数千円ほどになることが多いです。
ここに記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関や検査・処置の内容により異なりますので、診察時にご確認ください。
Q3. 水を抜いた後、膝を温めるのと冷やすのはどちらがよいですか?
A. 膝をさわって熱っぽいときや、処置の直後で腫れぼったさが残るときは、保冷剤などをタオルで巻いて冷やす対応が向いています。熱感がなく、慢性的なこわばりや重だるさが中心になってからは、入浴などで温めると動かしやすくなります。
参考文献
1. Sandhar S, Smith TO, Toor K et al. Risk factors for pain and functional impairment in people with knee and hip osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis. BMJ open. 2020. PMID: 32771991 / DOI: 10.1136/bmjopen-2020-038720
2. Deng X, Li Y, Li D. Ultrasound-guided versus blind arthrocentesis in knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis. Medicine. 2025. PMID: 39889185 / DOI: 10.1097/MD.0000000000041389
3. 「変形性膝関節症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html
4. 国立健康危機管理研究機構「糖尿病の治療ってどんなものがあるの?」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/010/01.html
5. Elabd OM, Alghadir AH, Ibrahim AR et al. Functional outcomes of accelerated rehabilitation protocol for anterior cruciate ligament reconstruction in amateur athletes: a randomized clinical trial. Journal of rehabilitation medicine. 2024. PMID: 38385715 / DOI: 10.2340/jrm.v56.12296
平成10年3月 帝京大学 医学部卒業
平成10年5月~平成11年3月 熊本大学医学部附属病院
平成11年4月~平成12年3月 宮崎県立延岡病院
平成12年4月~平成13年6月 熊本中央病院
平成13年7月~平成18年2月 公立玉名中央病院
平成18年3月~平成18年10月 福田外科胃腸科医院
平成18年11月 ふくだ整形外科開業
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
日本整形外科学会認定スポーツ医
リウマチ財団登録医
日本AKA医学会専門医
身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
難病指定医
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